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ピープルツリーの日々のこと

水曜日

8

6月 2022

世界フェアトレード・デーイベントのご報告 ~地球環境を守ることとフェアトレード~

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先週6月5日は世界環境デーでした。毎年この日には、環境を守ることについての関心と理解を深め行動を促すため、世界各国でイベントが行われます。今年のテーマは「Only One Earth(かけがえのない地球)」。この言葉は、地球は異なる国・地域の人々が個別に暮らすところなのではなく、地続きで世界中のみんなが一緒に暮らすひとつの星である、という感覚を改めて思い起こさせてくれるように感じませんか?

さて、先月5月14日(土)の世界フェアトレードデーに、ピープルツリーでは自由が丘店からの中継でオンラインイベントを行いました。世界フェアトレード連盟の今年のテーマ「Climate Justice(気候の公平性)」に沿って、ゲストの末吉里花さんとピープルツリー社長ジェームズ・ミニーが、気候変動の影響とその対策として地球環境とそこに暮らす人々を守るためにできることを話し合いました。

「フェアトレードは、<貧困>問題と<環境>問題を<ビジネスの仕組み>で解決しようという活動です。」というおなじみのスライドに続き、「世界のもっとも裕福な富裕層(世界の人口の約10%の人々)が温室効果ガスの約半分を排出している」、「世界の人口の50%を占める貧しい人々の排出は全体の10%」という「気候の公平性」とは程遠い現状についてのデータの後、ピープルツリーの生産者たちの暮らしには気候変動がどんな影響を与えているのか、そして彼らがどのような対策を取っているのかをお伝えしました。そのうちのいくつかを例にとってここでもご紹介します。

ピープルツリー生産者への気候変動の影響

●プロクリティ(バングラデシュ)(詳しくは こちら>)

ジュート(黄麻)をはじめとする天然繊維でできたカゴや、手漉き紙などのアイテムを手掛けています。 

ジュート(黄麻)をはじめとする天然繊維でできたカゴや、手漉き紙などのアイテムを手掛けています。

バングラデシュは非常に水害の多い国。こちらでは、気温上昇、異常気象によるハリケーンや暴風雨が発生、河川の浸食・山崩れの頻発で人々が犠牲になり、災害の危険性の高い地域から都市に移住せざるを得ない「気候難民」が増加しています。また、海水が土地に浸み込んで土の水中塩分濃度が上昇し、土壌が痩せて農作物の栽培に影響が出るだけでなく、飲料水の不足も起きています。これに対して、雨水や太陽エネルギーの利用促進、災害の危険性の高い地区へのシェルター設置、緑化の強化、気象予報の精度改善といった対策がなされています。また、資材をリサイクル・アップサイクルすることによって、ごみをなるべく出さないようにしているそうです。

●KTS(ネパール)(詳しくは こちら>

手編みのニット製品を手掛ける生産グループ。ほとんどのニットの作り手たちが、家族で季節ごとに農業を行っている。

手編みのニット製品を手掛ける生産グループ。ほとんどのニットの作り手たちが、家族で季節ごとに農業を行っています。

ネパールは地理的な問題で、水害・干ばつ両方の災害が起きやすい地域。こちらでは、急速な気温・降水量の変化で、山間部において雪・氷河が解け出したり、集中豪雨の発生により、水災害の危険が高まっています。また、雨季・乾季の急な天候の変動や乾季の増加で、農作物の減少、食糧不安、水資源の枯渇、森林や生物多様性の損失、インフラの損傷といった問題も起きています。対策として、生産の一部を水力発電による電力を使ったものに移行させるといった生産プロセスの改善を行っています。特に気候変動の影響を受けている農民の収入を補うためのサポートがますます重要になってきているそうです。

 

●クリエイティブ・ハンディクラフト(インド)(詳しくは こちら>

エコ繊維「テンセルTM」やオーガニックコットン環境負荷の小さい素材で衣服を生産しています。

エコ繊維「テンセルTM」やオーガニックコットン環境負荷の小さい素材で衣服を生産しています。

世界最大の綿花生産国であるインド。こちらでは、天候によって綿花栽培に影響が出、綿花の収穫量、販売価格ともに不安定になっており、綿花の調達が難しくなっています。気候変動の対策としては、廃棄物をアップサイクル・リサイクルしたり、太陽光エネルギーを活用しているそうです。

イベントでは、上記のほかの生産者からも気候変動による様々な影響や、それに立ち向かう対策が報告されました。より自然に近い暮らしをしている人たちが、自然災害によって住む場所や仕事を失い「気候難民」となるなど大きな影響を受けながらも、その対策を講じようと前向きに丁寧にがんばっている様子が伝わってきます。

オンラインイベントのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。

ピープルツリーの気候変動対策

ピープルツリーは30年前から、気候変動による環境や生態系に対する危機的状況を懸念し、「フェアトレード&オーガニック」を推進することで、「人」と「地球環境」を大切にするものづくりを行ってきました。オーガニックコットンや地元で入手しやすい天然素材を活かし、手織り、手刺繍、ハンドプリントといった手仕事を多用した生産をすることで、気候変動に加担しない、サステナブルなものづくりをしています。

(※ピープルツリーの「ものづくりストーリー」のページで、それぞれの手法や生産者たちについてご紹介しています。)

また、ピープルツリーでは、環境ポリシー(詳しくはこちら >)を設けて、素材から生産現場、輸送過程、ショップやオフィスまで、あらゆる場面で、森や水、空気を汚さず、人と命を守り、素材や梱包材を無駄にしない選択肢を選ぶようにしています。
そうしてお届けする、おしゃれな服、かわいい雑貨、おいしい食べもので、お客さまが日々の暮らしを楽しんでくださることで、地球環境も世界中の人々も、みんなが幸せになれる選択肢を提供する。それがピープルツリーの行っている気候変動対策です。

地球規模で考え、足元から行動を

右からゲストの末吉里花さん、ピープルツリー社長・ジェームズ・ミニー、ピープルツリー広報・鈴木

イベントでは、ゲストの末吉里花さんが、英語の「エシカル」(※直訳では、「倫理的」)という言葉を理解してもらいやすいように、エシカルの本質を「:影響を :しっかり カ・ル:考える」という風にかみくだいて伝えておられると教えてくださいました。普段からフェアトレード商品を選ぶなど日常生活を楽しみながらみんなの幸せに繋がることが大切、とおっしゃっている末吉さん。「自分が暮らしを楽しみながら、心地よく続けられることが大事」、「仲間を見つけ、一緒に行動を広げていくこと」、「一つ何か対策としてできることがあると、どんどん想像力が膨らんで、次にできることは何かと考えるようになる」などと、これからの暮らしに活かしたい、心に響くメッセージをたくさんいただきました。

大きな問題を前にするとあまりに壁が大きくて弱腰になりますが、小さな問題にかみ砕けば、肩の力を抜いてコツコツ気長にできることを、というリラックスした気持ちになれます。たとえ小さなことであっても、これから何十年か生活していくことで積み重なれば大きな差になっていくことでしょう。一人でたくさん努力するよりも、少しでも多くの人が少しずつ努力した方がきっと相乗効果でもっと大きな力になるに違いありません。「Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動しよう)」の言葉を思い出しながら、日々の暮らしの中で今できていることや、これからこんなことができたらいいなと思う事柄に、思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。