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ピープルツリーの日々のこと

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火曜日

7

5月 2013

Time Out Tokyoコラボレーション連載「ボーダレスな人びと」第2回

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ライフスタイルマガジン「Time Out Tokyo(タイムアウト東京)」とピープル・ツリーのコラボレーション連載第2回目は、スタイリストのアシスタントから独学でイラストを学び、イラストレーターとして活躍の場を広げる榎本マリコさん。転機をどうチャンスに変えたのか、そんな彼女のボーダレスな仕事観を聞いてみた。

榎本マリコ(イラストレーター)

-絵を描くようになったきっかけは?

曾祖父が日本画家で、家に屏風や絵が普通に飾ってある環境で育ちました。絵が好きで、幼稚園でも「ずっと絵を描いている子です」って言われてました。近所に画家の先生が住んでいて、描いた絵を持っていくと、おこづかいをくれたからっていうのもあるかもしれないですね(笑)。

その頃は自分が絵描きになるなんて、まったく思っていなかったんです。将来はイヌ博士になりたいと思っていましたから。動物がすごく好きで。

-本格的に絵を描きはじめたのはいつですか?

ファッションの専門学校を出て、スタイリストを目指していた時期もありました。
アーティストとの撮影が多いスタイリストさんのアシスタントをやらせていただいていて。ある時、絵描きの方が壁に絵を描いて、その前にモデルを立たせるという撮影があったんです。既成のものを集めてひとつのビジュアルをつくるのではなく、一から自分で世界観をつくるおもしろさってこれだって思って・・・。強い刺激を受けて、いろいろ思い出しちゃったんですね。アシスタントは辞めて、ちゃんと絵を描こうと決めたんです。

-そこからの転機はいつでしたか?

最初の頃は、独学でひたすら模写、模写、模写・・・の毎日。
これが “榎本マリコの絵” というものばかり追求して、世界観がまったく追いついていなかった。
最近になってようやく、鉛筆で描こうが、絵の具で描こうが、私がつくっているんだからいいやって思えてきたんです。それと同時に、お仕事をいただいたりとか、いろいろなタイミングが重なったので、吹っ切れたというのもあります。それが正しいか正しくないかは別として、吹っ切れたことで、私の中のくさびが取れたんです。そう思えた瞬間が転機でした。

昔は、ぶれているような気がして、変わっちゃいけないと思っていたんですが、それは違うと思います。年を重ねるごとに、どんどん変わっていきたいですね。

-たくさん人物画を描かれている印象があります。

そうですね、人も好きです。それが東京に住んでいる理由かもしれません。東京って本当にボーダレスだと思いませんか。そこが魅力で人が集まっているし、私も暮らしているんです。
人が多くてごみごみしてて、イヤだなと思うこともたくさんありますが、遠出して帰ってくると、不思議とほっとするんですよね。
私の絵は、そんな東京にいる人びとから、たくさんのインスピレーションをもらっています。
電車の中で、携帯をいじってる女の子が、ふと画面から目をそらして、はーってした表情とか・・・。あっ!いただき!って。

あとは、急にこの子を描きたいっていうのが頭の中に浮かぶんです。会ったこともない人なのに、鮮明に性格とか生まれた国とか名前とかもイメージできて。忘れないように急いで帰って、描きながらそのイメージをかたち作っています。

これからももっといろいろ描いていきたい。小説の挿絵とか、映像とか、プロダクトをつくったりとか・・・。やっていないことがまだまだたくさんあります。これは、おばあちゃんになってからでもいいと思っているのですが、宝物のような画集は出したいですね。

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【The days...インタビュー】

-ピープル・ツリー2013年春夏カタログのイラストを描いていただきましたが、依頼が来た時はどう思われましたか?

以前からピープル・ツリーの取り組みは、少しですが知っていたので単純にうれしかったです。誌面もいわゆる通販カタログとは違って、イラストを入れたり、クリエイティビティを感じました。

-ピープル・ツリーの印象は?

フェアトレードという社会へのアプローチをされていると知り、硬いイメージを持ってしまいがちですが、商品もとても洗練されているし、もっとカジュアルに、身近に私たちも参加できることが素晴らしいと思いました。
多くの人に考えるきっかけを与えてくれる、数少ない会社だと思います。

榎本マリコ Mariko Enomoto
1982年、埼玉県に生まれる。
日本画家であった曾祖父の影響もあり、自然と絵のある環境で育つ。
服飾専門学校を卒業後、独学で絵やアニメーションでの表現活動を始める。
雑誌、アパレル、CDジャケットや舞台、映画の劇中画、ポスター等も手がける。
今秋、個展を開催する予定。
http://www.mrkenmt.com

衣装協力:
ピープル・ツリー
オーガニックコットン・ボーダー・プリントTシャツ(イエロー)
http://www.peopletree.co.jp/shopping/ladies/168114.html

About Time Out Tokyo
タイムアウト東京は、街の探索と発見の楽しみを日本語、英語のバイリンガルで伝える“お出かけ促進メディア”。ヴニュー、イベント、特集記事、ブログなどのコンテンツをデイリーで発信しています。
http://www.timeout.jp/

金曜日

26

4月 2013

Time Out Tokyoコラボレーション連載「ボーダレスな人びと」第1回

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ライフスタイルマガジン「Time Out Tokyo(タイムアウト東京)」とピープル・ツリーがコラボレーションし、新しい連載をスタートする。
さまざまなジャンルで活躍する8人に、そのボーダレス観をインタビュー。彼らの言葉から見えてくるものとは・・・?

第1回目に登場するのは、性同一性障害をカミングアウトし、講演やメディア出演、さらには4月27日から始まるTokyo Rainbow Week 2013の代表として活躍する杉山文野さん。そんな彼に、ボーダレスなセクシュアリティ観について聞いてみた。

杉山文野(Tokyo Rainbow Week 2013 代表)

--世の中が決めた「男」とか「女」とかそういった便宜上のボーダーを乗り越えたきっかけは?

もともと僕は生まれた時から、そんな線引きのどこにもあてはまらなかったんです。だから、越えざるを得なかったという感じでしょうか。越えることによってしか生きるすべがなかったんです。

それは決して特別な何かではなくて、本当に衣食住からなんですよ。体のラインがでるのが嫌でTシャツも着ることができないとか、シートベルトや斜め掛けバッグで胸のラインがでるんじゃないかとか、トイレやお風呂、生理現象なんかも全部引っかかってしまって。

ご活躍されてますねって言っていただくけれど、僕は何かを努力したというよりも日々、普通に生活をしたかっただけなんです。


--生きていく中では、ただでさえ決まり事が多いですが・・・

そもそも、それぞれが持っているボーダーって、生まれながらに与えられているものもありますよね。例えば、日本人で、女性で、杉山家で・・・僕は女の子っていうカテゴリーを与えられて、でも女の子じゃないよなっていうズレがあったので、すごく考えて生きてきたんです。女ってなんだろう、男ってなんだろう、それを突き詰めると、人ってなんだろう、生きるってなんだろうって。常に問い続けてきたからこそ、そこで自分で考える力みたいなものを鍛えられてきた。

だからこそ、人の意見を否定するのではなく、それぞれの意見を認め合い、共有することを大切にしていますね。

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--いろいろな国を旅されていますが、国によってそのボーダーも違いますね

そうですね。旅することで、気づくことは多いです。日本の常識は、世界の非常識だったり。

ただ昔は、文化も言葉も越えた自分の知らない世界に、もっと心が楽になる場所があるんじゃないかと思っていたんです。

そんな時に行ったのが、エジプトの砂漠。何にもないだだっ広い、真っ白な幻想的な世界。そこに立った時ですら、自分の体が嫌なんだということに気がついたんです。これはもう逃げ道がないなと。世界のどこに行こうと僕は僕から逃げることはできないって。僕が僕自身を一番認めていなかったんだという事実と向き合いました。

--たくさん旅をした中で、今、東京を選んで暮らしている理由はありますか?

僕は、新宿・歌舞伎町で生まれて、育ったんです。ここは多種多様な人が集まる、他にはないぐらいのコスモポリタン。自分のセクシャリティのことも含めて、いろんな人がいていいんだよっていう雰囲気が好きですね。特に、歌舞伎町ほど、よいも悪いもいろいろなものを受け止める懐の深い街はないんじゃないかな。

--そういう意味ではTokyo Rainbow Weekも懐が深いですね

僕はたまたまセクシュアル・マイノリティ(セクシュアリティにおける少数派のこと)というツールを使って話していますが、いろんなマイノリティに優しい社会を実現したいと思っています。それはイコール、マジョリティ(多数派)にも優しい社会なんだと思うんです。マイノリティっていう視点を使うことによって、何かに行き詰っているマジョリティの人たちに、新しい発見があるかもしれない。

28日には東京レインボー・プライドがあったり、5月6日までの10日間毎日、約30ものLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った総称)に関連したイベントが都内各所で開催されます。足を運んでみることで、何か新たな発見があるかもしれないですね。

「性同一性障害、関係ないでしょ! いっしょでしょ!」って言ってくださること自体はありがたいけれど、僕たちにはまだまだ乗り越えなきゃいけない課題がたくさんある。そこを当事者だからとか被当事者だから、というのではなくみんなで一緒に越えていけたらうれしいです。
ボーダーがあるからこそのボーダレスを考えていかなければ。

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杉山文野 Fumino Sugiyama
トランスジェンダー
NPO法人(申請中)ハートをつなごう学校 代表
Tokyo Rainbow Week 2013 代表
1981年、東京都新宿区生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院にてセクシュアリティを中心に研究した後、その研究内容と性同一性障がいである自身の体験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』を講談社より出版。韓国語翻訳やコミック化されるなど話題を呼んだ。卒業後、2年間のバックパッカー生活で世界約50カ国+南極を巡り、現地で様々な社会問題と向き合う。帰国後、一般企業に3年ほど勤め、現在は自ら飲食店を経営するかたわら、各地での講演やNHKの番組でMCなども勤める。
http://fuminos.com

Tokyo Rainbow Week 2013
http://www.tokyorainbowweek.jp/

撮影協力:
Like! Shinjuku
http://like-shinjuku.com/

衣装協力:
People Tree(ピープル・ツリー)
オーガニックコットン・ボーダー・プリントTシャツ(ブルー)
www.peopletree.co.jp/shopping/ladies/168115.html

[About Time Out Tokyo]
タイムアウト東京は、街の探索と発見の楽しみを日本語、英語のバイリンガルで伝える“お出かけ促進メディア”。ヴェニュー、イベント、特集記事、ブログなどのコンテンツをデイリーで発信しています。
www.timeout.jp/